オルニチンは肝臓のオルニチンサイクルを活性化し、アンモニア解毒を促進することで、肝保護効果をもたらすと言われてきましたが、肝臓の細胞をただ培養するだけでは、オルニチンの効果は認められませんでした。
原因として、肝臓は複数の種類の細胞からなる複雑な構造をしており、細胞を培養するだけでは、その構造が形成できないためと考えられました。この度ES細胞※1から作成した肝組織を用いることで、肝機能を再現することが可能となり、オルニチンがアンモニア及び過剰なアルコールによる肝細胞死を抑制することが分かりました。この結果から、オルニチンの肝保護効果が細胞レベルでも確認されました。
※1 ES細胞:受精卵から作られた、様々な組織に分化する性能(万能性)を持った細胞
マウスES細胞由来肝組織(右図)、複雑な肝臓の組織をシャーレ上で形成させ、肝臓機能を再現したもの。
ES細胞由来肝組織をアンモニア、またはアルコール添加・非添加条件で培養し、細胞の生存活性、及び細胞死の程度を、 WST-8※2450nmにおける吸光度(Abs.450nm)、及びLDH※3放出量の差から測定。その際オルニチン添加が細胞死を抑制するか検証した。
※2 WST-8:細胞の代謝活性に依存して発色する試薬、生存している細胞が多いほど吸光度も高くなる。
※3 LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ): 細胞障害の指標、障害を受けた細胞が多いほど培地に放出される。
オルニチンを添加しない条件でES細胞由来肝組織を培養した場合、アンモニア及びアルコールに起因する細胞死が認められましたが、オルニチンを添加することで細胞死が有意に抑制されました。
この結果から、オルニチンには、アンモニアや過剰なアルコールにより引き起こされる肝障害から肝臓を保護する効果があると考えられます。
出典: 東京工業大学 田川ら
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