働きと効果

肝臓と疲労の意外な関係

肝臓と疲労は直結している

暴飲暴食などで代謝や解毒といった肝臓の処理能力に限界が来ると、脳に疲労サインが送られると考えられています。また、非常に多くの働きをする肝臓の機能が低下すると、身体のあちらこちらに影響が及んでしまうことは、容易に想像できます。

肝臓と疲労

疲労と疲労感の関係

疲労とは、使い過ぎやストレスなどでその機能が低下し、いつものように働くことができなくなること。しかし、休息すれば元に戻る状態のことです。そして疲労感とは、疲労困憊して病気になる前に「心身を休めて、疲労を回復させよ」という、健康を守るための危険信号の1つといえます。身体のどこかが疲労すると、その疲労サインを脳が察知し疲労感が生じます。すると脳から疲労回復を促す指令が発信されるというわけです。その指令を受けて休息すると、疲れは取れます。

使い過ぎと脂肪沈着による肝臓疲労

筋肉疲労、眼精疲労と較べて、「肝臓疲労」という言葉はあまり聞かれません。しかし、「夜更かしが続いたり、ストレスがたまると疲れる」というのは、誰もが経験していることでしょう。実は、不摂生と疲労の間には、肝臓が隠れているのです。
食べ過ぎ・飲み過ぎ、睡眠不足、ストレス、運動のし過ぎなど、日常的な行いの一つひとつが、肝臓の酷使や脂肪の沈着につながり、肝臓疲労を引き起こす原因になります。使い過ぎや脂肪沈着のために機能が低下した肝臓は、代謝や解毒といった役割を十分に果たすことができず、エネルギー不足や毒素が蓄積されて疲れてしまうのです。また、腹部内の多くの主要臓器とつながっている肝臓の機能低下が全身の疲労に直結することは、想像に難くありません。

疲労と疲労感の関係

肝臓を疲れさせる原因とその負担
肝臓を疲れさせる原因 肝臓への負担
食べ過ぎ 過剰な栄養の処理/タンパク質の分解によって発生する毒性物質・アンモニアによるエネルギー産生サイクルの阻害
アルコールの過剰摂取 過剰なアルコールの分解/分解時に発生する毒性の高い物質・アルデヒドによる、肝細胞内のミトコンドリアの機能低下
運動不足 抹消からの血液の戻りが悪くなり、流れの滞った汚れた血液の処理に追われる
過剰な筋肉運動 アンモニアが増加するため、肝臓はその処理に追われる/アンモニアによるエネルギー産生サイクルの阻害
睡眠不足
精神的ストレス
精神的ストレスに対処するために交感神経が緊張するので、肝臓を動かす神経である副交感神経がうまく働かない/交感神経の緊張は多くの内臓の血液量も減少させ、肝臓に余計な負担をかける
肝機能低下の流れ

肝機能低下の流れ

肝臓疲労が全身の疲労をまねく

肝臓の酷使によって起こるのは、肝臓疲労だけではありません。肝臓の機能低下は全身の疲れにつながると考えられます。肝臓は代謝や解毒などさまざまな機能を担っているので、エネルギーを日々大量に産生し消費しています。肝臓のエネルギー代謝が鈍ると肝機能が低下し、疲労状態に陥ってしまう可能性があるのです。

アンモニアの増加が全身の疲労をまねく!?

細胞内にある「ミトコンドリア」では、生命活動の原動力である「ATP」というエネルギーをつくり出しています。また肝臓のミトコンドリアではATPをつくり出す他に、「アンモニア」やアルコール摂取で生じる「アセトアルデヒド」といった人体に有害な物質の処理もしています。

細胞がATPをつくり出すためには、ミトコンドリア内のTCAサイクルという回路を効率よく機能させる必要があります。その働きを邪魔する物質の1つに、アンモニアがあります。アンモニアはミトコンドリアの環境を悪くすることで、ATPが作られるのを妨げるといわれています。つまり、エネルギーを順調につくり出すためには、アンモニアの解毒を促進することが大切なのです。

ところが、アンモニアの解毒にはATPが必要です。つまり、アンモニアが増えると、ATPの消費が増える上に、つくり出されるATPが減ってしまうということなのです。このように、エネルギー不足で肝機能が低下すると、有害物質の処理などが進みにくくなり、全身が疲労してしまうと考えられます。

飲酒がエネルギー産生のじゃまをする

ATPの産生を妨げるもう1つの物質がアセトアルデヒド。お酒を飲んだ後に、アルコールを分解する過程で作り出される物質です。
アセトアルデヒドは、アンモニアと同様、身体に悪影響を及ぼす物質で、細胞をキズつけてしまいます。これによって、ミトコンドリアをはじめとする細胞の機能が低下すると考えられます。このようにして、アセトアルデヒドもエネルギーの産生を阻害し、疲労をまねく可能性があるのです。

エネルギー(ATP)産生を 阻害するメカニズム

飲酒による疲労は、肝臓と脳が関わっている

お酒を飲んだ翌日は、二日酔いというほどではなくても、だるさや眠気、なんとなく頭が重い感じがあります。この疲れは、肝臓がつくり出す脳のエネルギーが不足することによって起こるものかもしれません。

アルコール性疲労の原因は、脳のエネルギー不足!?

楽しくお酒を飲んでストレスを発散した翌朝は、リフレッシュして元気にスタート!といきたいところ。しかし、なかなかそうはいきません。身体全体が重くて、スッキリせず、疲れを感じることが多々あるのが現実です。このアルコール性の疲労は、脳のエネルギー不足によって引き起こされている可能性があります。
脳は主にエネルギーとして「糖」を使いますが、「ケトン体」という物質も使います。この2つは、いずれも肝臓でつくられるものです。

飲酒によって肝臓の機能が低下

アルコールを摂取することで、肝臓内にNADHという物質が増加します。過剰なNADHはミトコンドリアの働きを悪くし、糖やケトン体をつくり出す働きを妨げます。それによって、脳に供給されるはずの糖とケトン体が通常通りにはつくり出せなくなってしまうのです。

肝臓から始まる疲労感

アルコール性の疲労は、肝臓の働きに悪影響を及ぼして、脳へのエネルギー供給を不十分にすることで引き起こされると考えられます。
疲労を感じ取ったり、休めのサインを出したりするのは全身の司令塔である脳ですが、その疲労感を左右するのは実は肝臓かもしれません。つまり、肝機能の低下により脳のエネルギー不足が起こり、疲労感につながると考えられるのです。

アルコール性疲労のメカニズム